福原の清盛を覗いた一間に余る大顔
どんな伝承か
清盛の執念が実って福原へ都が移されたのち、置き去りにされた平安京は荒れるにまかせた。八月十日過ぎ、旧都の月に心を引かれて福原から上洛した徳大寺実定が見たのは、荒れ果てた家々と、門前に深く茂る草のなかで恨むように鳴く虫の声だった。一方、福原にいる平家の人々の夢には、さまざまな変化のものが現れる。あるときは一間に収まりきらないほど大きな顔が清盛の寝所を覗いておびやかし、巨大な天狗が発するらしい笑い声が続くなど、物怪の沙汰が絶え間なく起こった。『平家物語』は、一門にもはや救いのないことをこうして語っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路・幽霊・文学史・昭和)