大熊山の肝試しと大入道の襲来
どんな伝承か
寛延年間、備後国三次郡布努村に十六歳の少年武士稲生平太郎がいた。武芸に優れ稲生の小天狗と呼ばれた彼は、五月雨の頃、隣家の元力士権八と、大熊山の三次殿の塚に出るという妖怪に会いに行こうと鬮を引き、平太郎が当たった。雨の闇夜に山を登り、五輪塔と天狗杉を手探りで確かめ、塔に草を結んで印にしたが何事もなく、下りで出会ったのは心配して来た権八であった。ところが七月、夕立に濡れて帰った夜、僕が大入道に押さえつけられる夢にうなされ、平太郎の前にも目の光る大入道が現れて襟首をつかんだ。斬りつけると縁の下へ消え、部屋の畳はすべて隅に積み上げられていた。
原典より
大きな入道姿の者が眼をぎらぎら光らして衝立っていた。—— 日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。