見番跡の宿直室で手招きする女
どんな伝承か
昭和の初め、日本橋久松町に鉄骨造で地上三階地下一階の見番が建った。芸者が稽古を積む場だったが、花柳界の衰えとともに売られ、繊維会社の持ち物となる。昭和四十八年、地下鉄十号線の工事事務所として東京都が買い上げ、一階を会議室と宿直室に使った。泊まった者が次々に、枕元へ立つ女に手招きされ、身動きも声も出ぬまま朝を迎えた。起こされるのは髪を短く刈った男ばかりで、三味線の音を聞いた者もいた。祓いを頼むと、その噂はあまり聞かれなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。