昭和五十八年に私の店に来た婦人が不思議な体験を語った
どんな伝承か
田辺市栄町で店を営む者が、昭和五十八年に客の婦人から聞いた話。知人の葬式に行くと、食事中に気を失って死んだはずの家の主人が、読経の最中に棺の縁へ指をかけて起き上がった。主人が言うには、真っ暗な中を手さぐりで進むと一面の花畑に出、さらに現世のものとは違う川のほとりに立った。向こう岸から真白な人が手招きするので渡ろうとすると、山彦のように「お前はまだ死の世界に来てはならぬ、現世にやり残した仕事がある」と告げられ、木の杖で肩を叩かれた。言われた通りにすると答えて元の道を戻り、蘇生したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。