南方熊楠の幽霊目撃体験(自宅二階)
どんな伝承か
昭和四年の一月、南方熊楠は山田家を辞して田辺へ戻った。そのとき別れたのが、山田夫人の四番目の兄との最後の対面になった。同じ年の十一月十六日の明け方、自宅の二階で眠っていた熊楠がふと目を開けると、電灯と自分の間にその人が無言で立っていた。熊楠は深山に独りでこもった時や人殺しのあった宿に泊まった時に、こうした幻を何度も見てきたので少しも驚かず、目を閉じて心を静めてから開き直したが、姿はまだそこにあった。何度か繰り返すうちに消え、熊楠は再び眠った。午前四時ごろのことで、五時に起きるとそのことをすっかり忘れて顕微鏡の仕事にかかったという。
原典より
ところが、その年の11月16日の早朝に、私が家の二階で寝ておりました時に、ふと目を開けてみると、電灯と私との間にあの方が黙って立っているのです。—— あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。