牛小屋に埋めた猿の手と牛疫除け
どんな伝承か
南方熊楠は「猴に関する伝説」のなかで、熊野では牛を神の物として藤白王子より南では放し飼いにし、春に猿まわしが訪れると猿に神官の装いをさせて牛舎の前で祈禱をまねさせたと記した。そのうえで、和深村のあたりでは今も猿の手を牛小屋に埋めて牛の疫病を避けている、と書き添えている。和深村は現在の串本町和深にあたる。猿を舞わせる祈禱そのものはすでに廃れ、代わりに猿の手を埋める呪いだけが残ったということかもしれない、と著者は読んでいる。猿に牛馬を守る力があるという古い考えの名残である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・現代)