杉の大木の神が宿った透視の青年
どんな伝承か
奈良の三笠山の裏手、字一ノ井というところに、ふた抱えもある杉の大木が立っている。その根方に庵を構え、人の吉凶や病の由来、その治し方までを透かし見るように言い当てる百田哲龍という青年がいて、たいそう繁盛していた。もとは奈良の表具屋の長男である。十年ほど前、突然、憑き物でもしたような興奮状態になり、捕らえようとする者から六尺七尺の高塀を一跳びに越えて逃げたこともあった。ある日、家を出て一ノ井へ行き、杉の大樹の根本に座っていると、耳もとで大きな声がして、自分は杉の神である、これからそなたの身に宿って何でも教えてやると言った。それ以来、何事も先に知れるようになったという。
原典より
奈良の三笠山の裏手の字一ノ井と云ふ場所に、ニタ抱えもある大木の杉があつて、その下に庵室を構へ、人の吉凶禍福、病氣の由来や治療法などを透視のやうにして知らせる百田哲龍と云ふ青年があつて、現在そこで流行つてゐるが、この人の由…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))