明月記が記す南都の猫また
どんな伝承か
鎌倉時代の歌人藤原定家がつけていた日記『明月記』には、天福元年八月二日の条として奇怪な噂が書き留められている。奈良——当時の呼び名で南都——に猫またと称する獣が現れ、ひと晩のうちに七、八人が襲われて咬みつかれ、傷がもとで落命した者まで出た。やがて誰かがその獣を打ち殺したものの、町ではその話でもちきりだと、定家のもとへ使いに来た少年が語ったという。年を経て妖力を得た老猫で、尾の先が二股に裂けているとされた猫またが、史料に姿を見せる古い例のひとつである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・1996年-2004年(取材期間に基づく推定))
魔王の木槌を求めて=稲生物怪録(妖怪伝説奇聞)/稲生平太郎の妖怪変化体験/一ツ目巨人・逆さ生首・化け蝦蟇/三次・比熊山の妖怪伝説/各地の妖怪奇聞