牛鬼
どんな伝承か
石見の海の牛鬼は夜に海から出るもので、日中は姿を見せないと信じられていた。明治の少し前、大田市大田の新市(今の雪見町)の染物屋の職人中屋政五郎は釣りが道楽で、毎晩八キロ離れた静間の魚津の海岸へ通っていた。牛鬼が出る前には赤児を抱いた濡れ女が現れて児を抱いてくれと頼むので、アシナコを手にはめて受け取れと年寄りに教えられていた。おぼろ月夜の晩、海から赤児を抱いた濡れ女が現れ、抱いてくれとささやいた。政五郎はアシナコを手にはめて児を受け取り、女が海へ消えると投げ捨てて走った。逃げ込んだ家にかくまわれると、牛鬼が周りを駆け回り、取り逃がして残念だと言って去った。その声は濡れ女とそっくりだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第11巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全56話(鳥取・島根=山陰)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。