神泉苑で龍に遭い病んだ下僕
どんな伝承か
内裏で夏の暑さをしのごうと、滝口の一人が従者の男を酒肴の使いに出した。十町ほど行ったころ空が陰って夕立となり、雨がやんでも男は日が暮れても戻らない。翌朝、滝口が男の家を訪ねると、男は死んだようになって臥していた。医師の忠明に相談すると、灰を多く集めてその中に男を埋めよという。教えのとおりにして一、二時ほどして掻き開くと、男は正気に返った。男は、神泉苑の西面で俄に雷電し、苑の内が暗くなって、その暗がりの中に金色の手が見えたところまでは覚えているが、その後は何も覚えていないと語った。忠明は、龍の体を見て病みついたのだからその治法よりほかはないと笑ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。