沖津沖で龍に髪を焼いて退けた船
どんな伝承か
ある人が江戸から船で上ったとき、東海道の沖津の沖を過ぎるころ、一むらの黒雲が虚空からその船をさして飛んできた。船頭は大いに驚き、これは龍がこの船を巻き上げようとするのだ、急いで髪を切って焼けと言った。船中の人々が残らず頭髪を切って火に焼いたところ、臭気が空に上り、かの黒雲はたちまち散り失せたという。『東遊記』が載せる一条で、越中・越後の海でも夏に黒雲が虚空から下りて海の潮が逆巻き上がり、その雲をよく見ると龍の尾や全形が見えると語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。