蜘蛛に生まれかわった弟
どんな伝承か
昭和四十三年のこと。静岡市安東に住む女性の弟は、癌で命を落とす直前に、自分が死んだら蜘蛛になって姉のところへ会いに行く、と言い残した。姉妹は何を言っているのかと笑っていたが、弟が世を去って一週間ほど経つと、姉が妙なことを言い出した。仏壇の弟の写真に向かって線香を焚くと、細く青みを帯びた美しい蜘蛛がどこからか現れ、煙が絶えると姿を消すというのである。妹は線香を好む虫だろうと取り合わなかった。ほどなく姉も癌で亡くなり、遺品のノートから蜘蛛になった弟へ宛てた手紙が出てきた。妹は一度だけ目にしたあの蜘蛛を、弟の生まれ変わりだと信じている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。