三郎と木の精
どんな伝承か
駿河国府中、今川家の栄えていた時分、魔の森と呼ばれる千本の杜に夜参りする肝だめしが行われていた。挑んだ者は皆途中で怖じ気づいて戻ってきたが、甲斐の住人板垣三郎だけは社の石段まで辿り着いた。杉の上から木片が落ちてきたので踏みつけて割ると、山を揺るがすような音が響いた。さらに進むと白衣の女がおり、衣を引き剥ぐと目が一つ、角の生えた顔が現れて消えた。その夜、三郎の寝床にしわがれた女の声がして「おまえは最前、妾の腹を踏み割ったろう」と言うなり首を断ち切られ、森の千本の木が一斉に笑ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・昭和中期(1977年頃))
ザシキワラシ(座敷童子)と福の神(怪談の世界)/遠野・東北の怪異伝承/家運の盛衰と怪音/妖怪と幽霊譚/山田野理夫の怪談採集