忠盛が伊勢別保で人魚を食う
どんな伝承か
前刑部少輔平忠盛が伊勢国別保という所に下ったとき、浦人が日ごとに網を引いていた。ある日、頭は人のようでありながら歯は細かく魚と変わらず、口が突き出て猿に似た大きな魚が三匹引き上げられた。二人でかついでも尾が地に長く引きずられるほどで、人が近寄ると高く叫ぶ声は人のようであり、涙を流すさまも人と変わらなかった。人々は驚き怪しんで、二匹を忠盛のもとへ運び、一匹を浦人に返した。浦人は皆これを切って食べたが何事もなく、その味は格別によかったという。世にいう人魚とはこの類のものかと『古今著聞集』は記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。