ザンによる津波予警の民話
どんな伝承か
石垣島に伝わる民話。ザンは奄美や沖縄で語られる人魚のような生き物で、陸へ上がったものを家に持ち帰ると主婦が死ぬか家族が海で災いに遭うとされ、捕まえたら浜ですぐ料理しなければならないと言われていた。ある夜更け、三人の漁師がザンを捕らえたが、陸では生きられないと泣いて命乞いをされ、海へ放してやった。ザンは礼として、間もなく津波が来るから山へ逃げるよう告げて去った。漁師たちは近くの二つの村に知らせて回ったが、夜中のことで一方の村は取り合わず、もう一方の村だけが山へ上がった。翌日は昼まで何事もなかったが、夕方になって黒雲が湧き、大津波が襲来して、信じなかった村の人々はみな呑まれたという。
原典より
ザンは御礼にと「間もなくこの村に津波がやって来ます。早く山へ逃げてください」と告げ、海へ戻って行ったのでした。—— 震災後の不思議な話-三陸の怪談(宇田川敬介) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
震災後の不思議な話-三陸の怪談(宇田川敬介)
『震災後の不思議な話-三陸の怪談』は、宇田川敬介が東日本大震災の後に聞き集めた不思議な話をまとめた怪異談集である。復興の手伝いで通った岩手・宮城・福島の被災地の人々や、各地の知人から聞いた虫の知らせ、生死を分けた出来事、津波の犠牲者の霊、タクシーの幽霊などの話を、津波の言い伝えや『遠野物語』、オシラサマ伝説とあわせて記す。全体を四幕に分け、「おわりに」で取材の動機と、市町村名を特定できないよう書き個人名も仮名にした方針を述べる。