下関の釜入り式
どんな伝承か
『火葬場のカマに入ると中風にならぬ』『火入れ前の焼却炉で釜入りの式をしてもらうと中風にならぬ』という俗信がある。著者がこれを知ったのは、山口県下関市の火葬場が新築されたときのニュースであった。一昨年の春、下関市の藤ガ谷火葬場ができあがって完工式を挙行した三月二四日、数十人の老人たちが人焼釜の前に押しよせて順番を争ったという。死体をのせて焼却炉に押しこむ押し車の上に仰臥したり正坐したりし、手に数珠をかけてナムアミダブツを唱え、坊さんに引導を渡してもらうものらしい。いくつかのテレビ局がこの騒ぎを電波にのせて紹介した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・今野圓輔・民俗学・昭和(高度成長期))
民俗学者・今野圓輔が高度成長期の日本に残る迷信を社会派ルポとして告発・分析した一冊。序章では、静岡県掛川市で異性双生児を畜生腹と恥じた母親の母子心中事件、青森県三本木市でキツネ落としと称して女を火あぶりにした殺人事件など、迷信が現代も殺人・心中を生む『黒い習俗』を突きつける。