「耳なし芳一」
どんな伝承か
幻聴に訴える幽霊として著者は、『番町皿屋敷』の皿を数えるお菊の声、『牡丹燈籠』の遠くから近づく駒下駄の音、そしてハーンの「耳なし芳一」を挙げる。芳一は盲目の琵琶法師で聴覚が異常に鋭いだけに、自分を呼ぶいかつい武者の胴間声、鎧の草ずりの音、女官一同のすすり泣きが効果的に使われ、手を引く女官の練絹のような手触りまで細やかに描写されて迫真性を高めている。原典ははっきりせず、同じ筋の「耳切団一」が徳島に伝わり、経文を書き残した所をもぎ取られる要素は『曾呂利物語』や庄内の民話にも見えることから、著者はもともと越後を中心に裏日本へ分布した瞽女の系列の話ではなかったかと考えている。ハーンが舞台を壇の浦に置いたことが臨場感を高めたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学・昭和(精神医学))
幽霊や怪異を脳と心理(幻覚)の科学で解明する。