生理的欲求
どんな伝承か
幻覚のもっとも単純な論理は、個体の欲求の充足である。マッチ売りの少女が淡いマッチの炎の中に最初に見たものは暖かそうなストーブ、次はおいしそうな七面鳥の料理、最後は自分を可愛がってくれた祖母の幻影であった。幻覚は欲求のうちもっとも切実なものから現れる。生命の危険にさらされた探検家たちも同じで、シルクロードの砂漠から生還したスウェン・ヘディンが灼熱の砂漠に見たのは満々と水をたたえたオアシス、雪山で凍死した登山家が見たのは電気コンロ、百日余を漂流したマゼランが見たのは陸地の幻影であった。薩摩の山奥に一年もの間を一人で過ごす山番の少年の孤独を癒したのは、夜ごとの夢に訪れた女神の屋敷であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学・昭和(精神医学))
幽霊や怪異を脳と心理(幻覚)の科学で解明する。