桃源郷物語
どんな伝承か
国学者平田篤胤が薩摩藩の者に特に頼んで記録させた『霧島山幽郷真語』に、薩摩国日置郡伊作田村の善五郎という山番の体験談が収められている。善五郎は十五歳から霧島山系の一つ明礬山の山番を務め、里へ下りるのは盆と正月だけという人里離れた暮らしを送っていた。ある晩、明け方近くに自分の名を呼ぶ声がして戸を開けて外へ出ると、五十前後の男が立っており、自分は山の女神の使者でこれからおまえをその屋敷へ案内すると言う。寝ぼけまなこでついていくと間もなく大きな屋敷に着いた。女神の屋敷は限りなく広く清らかな明かりに満ち、庭も広く果樹が茂り、馬や鶏や犬が飼われ、五色のあや衣を着て髪を長く垂らした侍女が何人もいて妙なる琴の調べがしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学・昭和(精神医学))
幽霊や怪異を脳と心理(幻覚)の科学で解明する。