飢えが変えた赤岳石室の味覚
どんな伝承か
昭和二十四年十二月、芳野満彦は仲間のY氏と八ヶ岳の縦走に入り、悪天に阻まれて赤岳の石室へ引き返した。五日目にY氏は息を引き取る。翌朝から芳野には、死んだ相手が話しかけてくる幻覚が現れ、道端の銅像を人と見誤りながら吹雪の中をさまよった。石室に戻った彼は、生米を口にしても味がせず、ほぐした草履の藁こそ何よりの馳走に感じたと書き残している。精神科医の中村希明は、これを飢えが味覚を変える証拠とし、水が美酒に思えたという養老の滝の孝行譚も同じ仕組みで説明できるとみる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学・昭和(精神医学))
幽霊や怪異を脳と心理(幻覚)の科学で解明する。