顕彰されざる博士
どんな伝承か
十数年前の秋、著者は登山の途上、夕闇迫る飛騨高山に降り立った。木の香り漂う霧に包まれた駅前商店街を眺めながら、その夜は高山城趾・城山公園の頂上に簡易テントを張って野宿した。国分寺あたりの店で一杯やった帰り、深夜、暗い人影が追いかけ合う無念の声と墓石が現れる異様な夢にうなされた。翌朝、快晴のもと城山を下ると、地味な寺の裏手に土蔵のような建物があり、ガラス戸越しに鋭い目つきの僧の写真が見えた。連れのAと「念写じゃないのか」「福来博士のあの有名な弘法大師の念写だな」と言い合い、それが高山市の福来博士記念館であると気づいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・現代(著述))
井村宏次『霊術家の饗宴』。明治末から昭和初期にかけて隆盛し、抹消された〈霊術家運動〉の歴史を発掘・復元する。プロローグで霊術家の運命を予告し、第一章では気合術師・浜口熊嶽が帝都に乗り込み九字と気合の嵐で名を上げ、明治の心霊手術を行い、実川上人のもと那智滝で仙人修行・三密の極意を得て、大阪の『真言秘密』裁判で判官臨席の気合術実験により勝利するまでを描く。