勝利への天啓
どんな伝承か
裁判で検事は、熊嶽が神仏の名を借りて香具師的行為をなしたにすぎず、大阪府違警罪第三条第五項に該当するとして拘留三日を求刑した。弁護人の佐藤、河合は、電気も蒸気も愚人が見れば妖怪に見える、真言秘密の法も同じことで修法者でなければわからぬ世界ではないかと説き、最終弁論を終えた。下された判決は科料壱円弐拾五銭であった。叫びたいことは山ほどあり怒りで胸がつぶれそうであったが、熊嶽は感情を押し殺して控訴を頼んだ。翌朝、公判の打ち合わせをすませて大阪港へ向かい、蒸気船で故郷の長島へ帰る。そのころ大阪では、検事側が罰金刑を不服として控訴し、事件は全面対決の様相を呈しはじめていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・現代(著述))
井村宏次『霊術家の饗宴』。明治末から昭和初期にかけて隆盛し、抹消された〈霊術家運動〉の歴史を発掘・復元する。プロローグで霊術家の運命を予告し、第一章では気合術師・浜口熊嶽が帝都に乗り込み九字と気合の嵐で名を上げ、明治の心霊手術を行い、実川上人のもと那智滝で仙人修行・三密の極意を得て、大阪の『真言秘密』裁判で判官臨席の気合術実験により勝利するまでを描く。