樹木の生い茂る古邸で飼い鶏が知らぬ間に減り
どんな伝承か
名古屋西区俵町一丁目、俵小学校の前に広々とした邸宅がある。石門を潜ると樹木がうっそうと生い繁って昼なお暗く、陰惨な気の漂う古い構えで、十数年前から妖怪変化が出没するとの噂が立った。当時ここに住んでいた騎兵連隊長の某少佐は養鶏を好み多くの鶏を飼っていたが、犬猫の入った形跡もないのに知らぬ間に数が減っていく。近所の勧めで裏の林に小さな祠を建てて祈禱をすると、以来鶏は減らなくなった。少佐の転任後は借り手もなく、空家を試しに訪ねた者は、風もないのに襖や障子が倒れ、天井から生々しい血潮が垂れるのを見たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・明治(妖怪学))
『妖怪博士』井上円了による『迷信の諸相・宗教の真相』。迷信を道理に背くことを誤って信じる心理と定義し、妖怪学の立場から全国を巡遊して各地の迷信を実地に報告・批判する(迷信打破)。