「覚えてろ」と縛られた女の出る家
どんな伝承か
『大勢新聞』が伝えた話として、浅草区駒形町六番地の二階家が紹介されている。船板塀に見越しの松という洒落た構えで住み心地は良さそうなのに、なぜか住人が居着かず、半月か一月で越していく。先々月の上旬、小林トメという未亡人が娘のナミと女中二人を連れて移ってきた。四日目の夜十二時ごろ、「覚えてろ」という声でトメが目を覚ますと、六畳の廊下に後ろ手に縛られた十七、八の女が島田髷を振り乱して悶えている。近づくと影も形もない。翌晩も翌々晩も同じ声とともに現れ、娘や女中の目にも映るようになり、十日あまりで一家は越していった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・明治(妖怪学))
『妖怪博士』井上円了による『迷信の諸相・宗教の真相』。迷信を道理に背くことを誤って信じる心理と定義し、妖怪学の立場から全国を巡遊して各地の迷信を実地に報告・批判する(迷信打破)。