四国の迷信――犬神
どんな伝承か
阿波の国には古くから犬神と称するものがあり、代々その家に伝わって血統相続するものとされ、社交の上で甚だしく擯斥され、しばしば結婚の妨げにもなったという報告が寄せられている。犬神となって狂態を演ずるのはたいてい女子で、男子は千人に一、二人にすぎず、忌まれるのは主として食物に関わり、憑かれるのは皆貧困な者で、士族や富裕の家に犬神があったとは聞かないという。阿波の池田町は四国中の犬神の本場と唱えられ、著者も二度この町を訪れて実況を聞いたが、昔は毎年多く生じた犬神つきも近年は次第に減っているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・明治(妖怪学))
『妖怪博士』井上円了による『迷信の諸相・宗教の真相』。迷信を道理に背くことを誤って信じる心理と定義し、妖怪学の立場から全国を巡遊して各地の迷信を実地に報告・批判する(迷信打破)。