恋敵の梅勇を突き倒した芸者千代香の霊
どんな伝承か
大正十四年十一月、名古屋の実話。大須の芸者千代香は、囲い主の平松晋吾が妹分の芸者梅勇と親しいと知って荒れ狂い、性病の悪化もあって同年十月末日に悶死した。その夜、梅勇の寝間に千代香の姿が現れて突き飛ばし、腹に五本の指の跡が残った。女中も何者かに突き落とされ、梅勇は間もなく息を引き取った。平松は葬式に出ず、翌年欧米へ去りパリで客死したという。
原典より
帰ったのは十一時少し廻った頃であつたが、自分の寝間である二階の六畳に入ると、其所に千代香がちゃんと座り込んで、恐ろしい面相をして居る。—— 修羅挑天 仏教より観たる幽霊の正体(修羅挑天・仏教・幽霊論・1931年(昭和6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
修羅挑天 仏教より観たる幽霊の正体(修羅挑天・仏教・幽霊論・1931年(昭和6年))
『仏教より観たる幽霊の正体』は、修羅挑天が著し、昭和六年に中央出版社から発行された、仏教の立場からの幽霊論である。霊魂観念の変遷、四悪趣と幽霊、幽霊の定義と分類を説き、責任感の強い幽霊・嫉妬の幽霊・復讐する幽霊などを、新聞記事や著者が自ら調べた明治から昭和初めの実例、英国の霊媒の家や天津での見聞で示す。緒説と十段からなり、後半では倶舎論・唯識論・起信論・法華経・真言密教・浄土門の教えに照らして幽霊を論じている。