池に沈められた侍女お住の五十回忌
どんな伝承か
ある屋敷で、びしょ濡れの若い女が夜ごと現れ、寝ている妻女の枕元にすがって助けを乞うた。同じ夜、抱いて寝ている幼な子が夢にうなされ、ひとりでに「お住」という名を呼んで泣き叫ぶ。当主の隼人は下男を集めて屋敷の由来を尋ね、庭の深い池をさらってみようとした。そこへ八十を越えた女隠居が現れて止め、五十年隠してきたことを打ち明ける。先代が手をつけた侍女お住を、嫉妬から庭で打ちすえ半死半生にして捨て置いたところ、お住は池に身を沈めたのだという。その年が五十回忌にあたると知れ、一同で墓に参り回向すると怪異はやんだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
実説妖怪新百話(明治期(明治9年~明治18年の事例を含む、編纂は明治中後期と推定))
『実説妖怪新百話』は江戸時代から明治期にかけての怪談・心霊現象を記録した実例集である。本書の主要なテーマは、嫉妬・怨念・執念による死霊の祟り、狐や狸による化かしと報復、そして不幸な死を遂げた者による因果応報である。特に注目される点は、妻の虐待や後妻問題に関連した怨霊現象が多数記述されていることで、嫉妬による執念がいかに強力な超自然力となるかが繰り返し示唆されている。