胸に跨がる女と二夜続いた金縛り
どんな伝承か
麹町三番町の借家で枕元に座る女を見た翌晩、小山内薫は用心して床に就いたが、ふたたび胸が苦しくなった。今度はすぐに目を見開くと、前夜と同じ着物の女が胸の上にまたがっており、石のように重くて身動きできない。ランプも書棚もはっきり見え、夢ではないと思ったが、やはり帯から上は見えなかった。前夜と同じほど抵抗したのち叫び声とともに跳ね起きると、女は消えていた。小山内は二度とその部屋で寝ず、巣鴨の新居が完成すると移った。後に近所で、昔この家に住んだ軍人の妻と妾の間で、虐待の末に一方が死んだといううわさを聞いたという。
原典より
すると、今度はゆうべと同じ着物の女が私の胸の上に跨がっているのである。—— あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。