行灯の油をなめる女と青い炎
どんな伝承か
語り手の母方の親戚に、諸国を巡って仕官の口を求めた浪士がいた。職にありつけず東京へ出て、細い縁を頼りに日を送っていた。その近所に、住む者が一月と居つかない空き家があった。もとは武士の住まいで、主が愛妾の過失を咎めて手討ちにしたのち、自身も病みついて死んだと伝わる。以来、化物屋敷と呼ばれ、借り手も絶えていた。家主に頼まれて、この浪士が一夜を明かすことになる。夜半に二階を歩く音が起こり、耳を澄ますと止む。それを繰り返したあと、青ざめた顔の女が降りてきて行灯の裏に立ち、覗き込んでにたりと笑うと、垂らした髪の先を油皿に浸した。すると火はたちまち青い炎になって燃え上がり、女は姿を消したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
実説妖怪新百話(明治期(明治9年~明治18年の事例を含む、編纂は明治中後期と推定))
『実説妖怪新百話』は江戸時代から明治期にかけての怪談・心霊現象を記録した実例集である。本書の主要なテーマは、嫉妬・怨念・執念による死霊の祟り、狐や狸による化かしと報復、そして不幸な死を遂げた者による因果応報である。特に注目される点は、妻の虐待や後妻問題に関連した怨霊現象が多数記述されていることで、嫉妬による執念がいかに強力な超自然力となるかが繰り返し示唆されている。