塩を踏んで渡る御嶽教の火渡り
どんな伝承か
御嶽教の行者や山伏が神聖なものとしてきた火渡りを、筆者は神田の教会の祭りで実際に確かめている。手順はこうだ。二坪ほどの広さに割木や木炭を並べて火をつけ、行者が祈禱と呪文で場を整える。炭がすっかり熾ったところで、警護の者が竹竿で火床を叩いて平らにならし、人の通る筋は火の気が見えなくなるほど固く押しつける。次いで四方へ塩をまき、渡る者は両足の裏で塩を踏みしめて湿らせてから進む。筆者は規則を破って二、三度往復してみたが、誰ひとり火傷をしなかった。火床に空気が通らず火勢が落ちること、足裏の皮が厚いこと、塩が燃焼を妨げることが理由だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。