第六章 幽霊の周辺
どんな伝承か
日本の幽霊たちは、あるときはひどく孤独であり、あるときは数限りない妖怪に囲まれて賑やかな世界を現出する。『近世畸人伝』が伝える白幽子は、清絶にして人間にあらずといい、年齢は二百歳を過ぎたか、洛東白川の山中の洞穴に芦の簾をかけ、目を閉じて端座し、髪は膝まで垂れ、机上に中庸・老子・金剛経を置くのみだったと伴蒿蹊は記す。それは実在の人間でも人間以外の何ものでもなく、幽霊そのものではないかという。近世において日本の幽霊は完成し、復古神道を鼓吹した平田篤胤は『稲生物怪録』に幽霊を登場させ、備後三次の稲生平太郎の屋敷に次々と現れた物怪を詳細に述べていると紹介される。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路・幽霊・文学史・昭和)