スケッチの横顔に現れた春菊の顔
どんな伝承か
心霊写真に凝っていた数年間、著者はめぼしい成果をほとんど得られなかったが、例外もあった。鶴蝶という舞妓の寝顔を撮ると、死んだ春菊の顔らしいものが二重に写り込んで人を驚かせた。もっとも今その引き伸ばしを見ると、さほどのものではないという。また若い画家江上翠波と親しくなって何度も肖像を描いてもらううち、円山公園の薄の原で描いた著者の横顔の脇に、小さなもう一つの顔が現れた。誰に見せても春菊の顔だと言い、顎のあたりがそっくりだった。同じことが前後三、四度あったという。
原典より
円山公園の薄原のなかでかいてもらったぼくの横顔のわきに小さな、もう一つの顔が現われた。—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。