丸亀の長尾郁子夫人による念写実験事件
どんな伝承か
明治四十年一月のこととして語られる丸亀の念写実験の話。当時学界で問題になっていた長尾郁子夫人の念写を確かめるため、理学博士山川健次郎が助手二人を連れて丸亀の長尾家を訪れた。予備実験のあいだに乾板を入れた鞄が何者かに開けられた形跡が見つかり、座は険悪になって、博士はその日の実験を取りやめた。ところが念写の場で、夫人は博士が両手に持つボール箱を見て空だと告げ、改めると助手の手落ちで本当に乾板が入っていなかった。念写の真偽は決着しないまま、夫人は翌年の二月に亡くなったという。
原典より
すると、夫人は、「そのボール箱は空です」と申しました、「えッ」山川博士は以外に思つたのですが、夫人がそういうものですから中を改めて見ました所、果して長尾夫人の言つたように、本當に空箱でした。—— 心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年))
『心霊の神秘』は、武久勇三が一九四八年晩秋に序を書き、昭和二十四年に善隣出版社から千部限定で出した心霊現象の解説書である。近親の死に際して現れた幽霊や夢知らせなどの実例を、戦時中の出来事や知人から聞いた話、外国の研究記事から集め、頭脳の霊波による精神感応として説明を加える。話の人名はすべて仮名とことわる。後半の「第三篇 超心理学」では透視術・夢の原理・催眠術・読心術を説き、終わりに戦死の知らせの話と生命論を置く。