旬報社の二階で聞いた産声
どんな伝承か
昭和二、三年の頃、映画監督の山本嘉次郎ら三、四人が帰りそびれ、麻布今井町の旬報社に泊まることにした。午前一時ごろ二階に布団を敷いたが、蒸し暑くて寝つけない。うとうとしかけたとき、部屋じゅうが青白い光に包まれた。電車の走る時刻ではなく、電灯も切ってある。訳の分からぬまま横になっていると、女の泣き声とも呻きともつかぬ声がどこからともなく流れ、続いてオギャーという産声が聞こえた。一同は飛び起き、朝まで眠れなかった。少し前、この事務所で社の男に振られた妊婦が猫いらずを誤って多く飲み、死んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。