足音なく追ってくる化猫のような二人組
どんな伝承か
著者が大学時代に体験した出来事。夕食後、銭湯へ行こうと大阪の松屋町筋にある自宅前の、府立貿易館向かいの歩道を歩いていると、言葉ではない金属音のような声で話しながら、足音を立てずに追ってくる二人組がいた。振り向くと、背は子どもほどなのに皺だらけの赤ら顔で、耳が大きく尖り、化け猫のような目と大きく裂けた口をしており、左右からつかみかかってきた。自転車屋の勝手口へ逃げ込む間にも、地面から浮いたまま先回りしてきたという。著者は長く天から降りてきた天狗に襲われたのだと思い込んでいた。後年、ガンセンターを退院した今東光を見舞った著者は、ユリ・ゲラーの撮影に向かう日本テレビへの車中でこの話をした。今はすぐさま宇宙人に出会ったのだと言い、背丈を問われて一メートル四十ほどと答えると、やはり宇宙人だと大きくうなずいた。数日後には空飛ぶ円盤の研究家が家を訪れ、円盤へ連れ込んで研究に使うつもりだったのかもしれないと言ったという。
原典より
人が追いついてくる気配がするが、足音がしない。—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。