例十=天狗の護る剣術家
どんな伝承か
徳川の末期、伯耆国の名山大神山の西麓、八郷村の旧家竹内家の一人息子・藤一郎は五歳のとき、乳母に連れられて野遊びに出た隙に忽然と姿を消した。神隠しと信じた両親は諸方の神仏に祈り続けたが消息は知れず、失踪の日を命日として弔った。ところが藤一郎は十四歳のとき突然戻ってきた。どこで何をしていたかは一切語らなかったが、剣術に達者になっており、一室に天狗を祀って誰も入れさせなかった。その部屋には一年中花の絶えない藤の花が活けられ、花が凋まぬ限り天狗が一家を護るのだと言い伝えられた。
原典より
徳川の末期に、伯耆國の名山大神山の西麓なる八郷村の旧家竹内の独息子の藤一郎と云ふ五歳の幼童が、或る日乳母に連れられて野へ遊びに出てゐたところ、乳母がチョイと脇見をした隙に、姿が俄かに掻消す如く見失はれて了った。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))