亡霊が結ばせた位牌の祝言
どんな伝承か
昭和十八年六月、台湾総督府に勤める崎枝政雄が出張で上京し、新宿区柏木の親戚石田家に泊まった。近所の娘小夜子と親しくなって結婚を約束するが、父の惣兵衛が承知しない。見送った帰り、小夜子は高熱を出して錯乱し、精神病院で九月十日に息を引き取った。崎枝も翌十九年の同じ九月十日、ニューギニアで戦死する。以来、双方の親の枕もとに二人の亡霊が立つようになった。昭和二十八年、上京した崎枝の母が石田家の仏壇に息子の位牌を預けると、題目を唱えていた老いた行者が位牌のそばに若い男女の姿を見た。事情を知った惣兵衛は娘を嫁がせようと言い出し、二つの位牌に酒を注いで祝言を挙げた。以後、亡霊は現れなくなったという。
原典より
昭和十八年の六月の中旬、大東亜戦争が日ましに苛烈さを加えつつあるさなかに、台湾総督府勤務の若い判任官崎枝政雄(沖縄の石垣島出身)は、東京に出張を命じられ、母方の遠縁にあたる新宿区柏木の石田宅に旅装を解いた。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲・昭和初期(推定1920年代~1930年代)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲・昭和初期(推定1920年代~1930年代))