大グモの穴から湧いた毒の清水
どんな伝承か
自証院の境内はかつてもっと広く、そこに得体の知れない化けものがいて、日暮れどきに道を通る女をさらうので人足が絶えた。三田に住む渡辺綱は薄化粧をして女の装いで道へ向かい、覆いかぶさる大木の上に黒い塊が動くのを見つける。垂れてきた紐に巻き取られて引き上げられるや、綱は懐の刀を抜いて斬りつけた。化けものは地響きを立てて落ちたが姿は消え、血の跡をたどると境内の土まんじゅうで途切れていた。翌朝掘ると二抱えもある大グモが死んでおり、その穴から湧いた清水を飲んだ村人は苦しんで死んだ。以後そこはクモの井戸と呼ばれ、誰も口をつけなかったという。
原典より
場所 市谷富久町一一八番地(クモ切坂)、ならびに富久小学校と成女学園の境時代 平安時代(年代不詳)むかしの自証院の境内は、もっと広大であった。—— 新宿と伝説(新宿区教育委員会) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新宿と伝説(新宿区教育委員会)
新宿区教育委員会編『新宿と伝説』を全62話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。