紀州兵生の木地屋と縁組忌避習俗
どんな伝承か
紀州では熊野山中の話ばかりを聞いている。西牟婁郡二川村兵生の山には、明治三十年頃に阿波から五、六戸の木地屋が来ていたが、後にまたどこかへ去った。初めて知ったことは、彼らが単に「木地」と言っていたものが脚のある白木の高杯で、神祭の用に限って用いられることである。言語も習俗も土地の者と同じでなく、また木地屋は神の器物を作る者だから、その娘をもらうと位負けがするなどといって、一般に縁組みを望まれなかったが、なかなか美人が多く、一、二人は常人に嫁している者もあった。また御幣餅を作って食う風があり、握り飯を串に刺して焼き味噌をつけたものだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。