犬神事件の背景・祈禱師の口
どんな伝承か
犬神事件の背景を係官が調べたところ、次のことが分かった。三田は安部の小作人であったので、その小作地を買い受けたいと再三申し込んだが安部は応じず、山林の一部を開墾させてほしいという頼みにも応じなかったため、三田は安部に悪感情を抱いていた。さらに安部は土建業者で地主でもあり、相当な財産家になっていたので、部落民から羨望と嫉妬の目で見られていた。そこへたまたま三田の子供の病気が起こり、部落に来ていた妙光という祈禱師の口を借りて、安部の家は犬神持ちだと言いふらされたのである。係官は矢上町の有力者十二名を集めて犬神持ち迷信打破の座談会を開いたが、猜疑心を強めただけであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・昭和(改訂版))
速水保孝『憑きもの持ち迷信―その歴史的考察』の改訂版。自ら狐持ちの家に生まれた著者が、つきもの持ち迷信による差別を内側から告発し、その歴史的基盤を考察する。序章で研究に志した動機・問題の核心・結婚に直面しての苦悩を語り、人権を脅かす実例として狐持ちにまつわる隔地心中、次々と破談になる三兄妹、隠岐の人狐解消決議、犬神が乳児を食ったと絶交、堆肥小屋に外道を飼うを挙げる。