折元山の大日堂に出た綿くり娘の古狐
どんな伝承か
昔、正代の青蓮寺が持つ大日堂は折元山の中ほどにあり、老松の茂る夜は真っ暗で寂しい所だった。そこに綿くりをする娘の化け物が出るという噂が立ち、日暮れの後は誰も通らなくなった。宮鼻の弓の名人岩次郎は、矢を一本しか作らないので一本こっきと呼ばれていた。夜、大日堂の庭で行灯のそばに座る娘を見つけて胸を射抜いたが、娘はにっこり笑って消えた。翌晩も同じだった。三日目、八幡さまに祈ると行灯を射よとささやく声がし、行灯を射ると獣の叫びとともにすべてが消えた。翌日、高坂の高済寺の裏山で胸を射抜かれた古狐の死骸が見つかり、大日堂の裏山に埋められ、塚の上には松が一本植えられたという。
原典より
矢は確かに娘の胸板を射抜いて、ぶすりと大日堂の濡れ縁に突き刺さった。—— 東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史)
『東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説』は、東松山市の市史の民俗編のうち、伝説の部分を収めたものである。岩殿山の悪龍退治や比企一族の落人の話、永福寺の河童の詫証文、箭弓神社の銭絵馬、狐に化かされた話、神かくし、雪女郎など、市内の寺社・坂・沼・塚にまつわる四十六話を載せる。多くは会話を交えた物語の形で書かれ、筆者が幼い頃に母から聞いた話や古老から聞いたままの話も含み、末尾に〔 〕で由緒や文献の注を添える。