杖の跡から湧いた弘法大師の願い井
どんな伝承か
暑い日、岩殿観音へ向かう道で、あかざの杖をついた行脚僧が売薬の行商人と道連れになった。喉が渇いたとこぼす商人に、僧は杖を道端の草むらに突き立てて真言を三度唱え、一喝して引き抜いた。すると跡から澄んだ泉が湧き出し、商人は夢中で飲んだ。僧は手を清め、観音の名を唱えながら三度水を捨ててから静かに飲んだ。名を尋ねられると空海と名乗ったという。泉は葛袋の高本から岩殿山へ向かう道の端にあり、千年余りたった今も湧き続けて『弘法大師の願い井』と呼ばれ、村人の渇きを癒しているという。
原典より
こうしてこの泉は葛袋の高本から岩殿山に通じる道の端にあり、千年余もへた今日も尚、渾こんと湧き出していて、この附近の村人達に『弘法大師の願い井』といわれ、村人の渇をいやしているという。—— 東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史)
『東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説』は、東松山市の市史の民俗編のうち、伝説の部分を収めたものである。岩殿山の悪龍退治や比企一族の落人の話、永福寺の河童の詫証文、箭弓神社の銭絵馬、狐に化かされた話、神かくし、雪女郎など、市内の寺社・坂・沼・塚にまつわる四十六話を載せる。多くは会話を交えた物語の形で書かれ、筆者が幼い頃に母から聞いた話や古老から聞いたままの話も含み、末尾に〔 〕で由緒や文献の注を添える。