夜道にざるの転がる音がするざる坂
どんな伝承か
毛塚から田木へ向かう台地のはずれに、ざる坂という急な坂がある。夜更けにひとりで通ると、後ろからざるが転げ落ちてくるような音がごそごそと聞こえ、振り返っても何も見えず、歩き出すとまた音がするという。昔、稲刈りのあとの落ち穂を拾ってざるに入れて帰る女房が、この坂で足を滑らせ、拾い集めた穂をすっかりこぼした。忙しさに疲れて気が立っていた、ふだんはおとなしい夫がかっとなって蹴りつけると、打ちどころが悪く女房は死んでしまった。そのとき女房が落としたざるが、今も転がるのだと語り伝えられている。
原典より
夜遅く一人でこの坂を通ると、後からごそっごそっとざるが転げ落ちて来るような音がする。—— 東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史)
『東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説』は、東松山市の市史の民俗編のうち、伝説の部分を収めたものである。岩殿山の悪龍退治や比企一族の落人の話、永福寺の河童の詫証文、箭弓神社の銭絵馬、狐に化かされた話、神かくし、雪女郎など、市内の寺社・坂・沼・塚にまつわる四十六話を載せる。多くは会話を交えた物語の形で書かれ、筆者が幼い頃に母から聞いた話や古老から聞いたままの話も含み、末尾に〔 〕で由緒や文献の注を添える。