借家に夜ごと来た古狸を斬る
どんな伝承か
戸田流兵法の達人と称された浪人、富永金左衛門は、江戸の西久保榎坂の上に借家住まいをしていた。この家には夜ごと何かが訪れて怪しい振る舞いをする。人ではあるまい、狐狸のしわざだろうと見当をつけた金左衛門は、寛永十一年正月十五日の夜、寝床に人が寝ているように見せかけ、自分は部屋の隅で待った。明け方近く、戸の開く音もなく入ってきたものは、両眼が星のように光り、形も定かでない凄まじい姿だった。寝姿の上を跳ね回るところを斬りつけ、深手を負って逃げるのを追い、二の太刀で仕留めた。灯りをかざすと年経た古狸である。家主は、この狸のせいで誰も二か月と住めなかったと喜んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。