例二 飲食した幽霊
どんな伝承か
明治四十三年八月五日夕方、東京の川合春充が大阪市東区(現・中央区)の弁護士・藤田(変名)の事務所を訪ねると、藤田は「僕の所へ死んだ人間が訪ねて来たよ」と語った。数日前、女中が『前中』という男を招き入れ、麦酒や肉を振る舞ったというが、藤田の元には前中が昨年七月末に死去したとの手紙が届いていた。日誌にも来訪の記録があり、女中は幽霊と知って震え上がって暇を願い出た。前中は生前と変わらぬ姿で二時間も語り、闘病の苦労や「幽霊というものはあるよ」という言葉を残し、神戸の東尻池に住んでいると告げて去ったという。
原典より
先年「道」誌に、東京の川合春充氏の偽らざる責任附きの事實談として掲載された幽靈談である。—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・昭和初期) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・昭和初期)
心霊研究家・岡田建文の『心霊不滅』。唯物科学を批判し、肉体死後も心霊(心識)が不滅であることを古今東西の事例で立証しようとする心霊科学書。序説でイオン研究所のエーテル体撮影や、神戸の歯科医方で死去した令嬢朝子の消息を語ったセキセイインコ、タイタニック沈没時の挿話を置く。