居倉権左衛門の赤い着物の人
どんな伝承か
居倉の権左衛門という人は、岩茸とりをしたり、冬は猟をしたりしていた。ある年、川端下の東股へ小屋をかけて猪とりをしていたが、一日じゅう山を歩いても獲物がなく、帰り道の道端に伸びのよい木があった。なぜ誰も切らないのだろうと思い、印をつけようとマサキリで根元へ三度ばかり切り込んだ。打ち込むたびにスルスルと何かが下りてくるような音がし、やがて刃が欠けたのであきらめて帰った。一町ほど来て振り返ると、こずえに真っ赤な着物を着た和尚様のような人がいた。小屋へ下ってくると、同じ人が同じ刃の欠けたマサキリを担いで上って来たので、恐ろしくなって駆けこんだ。これが天狗だろうということであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌・自治体史(民俗))
『南佐久郡誌 民俗編』第十三章所収の伝説・世間話。長野県南佐久郡に伝わる口承を採録する。