入金の廊下に残る小さな足跡
どんな伝承か
向島の入金という料理屋で、著者は死んだ若い芸妓の追善会を営んだ。ぽんたと呼ばれたその雛妓は十六で、抱えの主人が将来は嫁にと考えるほどの売れっ子だったが、故郷の鴨川町へ遊びに行った先で宿を抜け出し、岬の岩の方へ歩いていったきり戻らなかった。翌朝、沖から帰る漁船が海に漂う姿を見つける。友禅の単衣に舞扇を差したままで、岸には下駄が揃えて脱いであった。座敷で舞をこきおろされ恥をかいたことを苦にしての死だという。追善会の夜、拭いたばかりの廊下に小さな足跡が点々と残った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦・昭和中期~後期(推定1960年代~1970年代))
霊媒実験と透視(霊界五十年)/放送局・邸宅の幽霊/自殺者の霊と幽霊屋敷/作家長田幹彦の心霊体験/明治〜昭和の心霊交遊