深夜零時に一致した念の言葉
どんな伝承か
戦時中、哲学に進んだ友人に誘われ、著者はテレパシーの実験をした。著者は青山、友人は三鷹のそれぞれの自宅で、夜零時から三十分間、著者が送り手、友人が受け手となり、一分ごとに頭に浮かんだことを書き留めた。翌日に友人宅で突き合わせると、送っていないことや無視されたものが多い中に、同じ時刻でぴたりと合う文句がところどころにあった。隣家の犬の名カチは時計の音のように、向かいの猫の名コロは転がる音のように届いていた。たまにはしるこをおごりたくなれという難しい文は、今度しるこでもおごってやろう、という形で受け取られていた。
原典より
それでも、「たまにはしるこをおごりたくなれ」というだいぶむずかしいものが「やつに今度しるこでもおごってやることにしよう」となって行っているのには驚いた。—— 続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉の随筆集で、あとがきの日付は昭和四十七年三月十日である。出版の都合で前後編に分けたうちの後編にあたり、ニューギニアやニューブリテン島、トロブリアンド島の部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続いて、幽霊についての自説と、自身や身内が出会った怪談を収める。終わりには手相、テレパシー、呪い殺し、雨やみの術、インドから自宅へ魂を飛ばす実験の話が並び、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。