殺された被害者の同行する怨霊
どんな伝承か
昭和元年の二月十二日の夜、大垣市伝馬町の自転車店に強盗が入り、熟睡中の店主福野信行が殺された。犯人は市外今村町の精米屋の次男安田次郎で、検挙されたのは福野の百箇日の命日であった。安田は弁護人の桐山弁護士に怪奇な話をした。犯行の一箇月後、米原駅前の旅館へ昼食に入ると、女中が膳を二つ運び、一つを安田の左側に置いた。一人だと言うと、女中は確かに二十五、六の方と二人であがったと言い、その顔かたちは被害者福野そのままであった。安田は恐ろしくなって逃げ出した。福野の家でも、殺害から一週間ほどして兄の政行と親戚の川瀬吾市がいると、畳に置いた鉄瓶が躍るように十分ばかり動き、二人は驚いて逃げ出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年))
日本怪談実話(田中貢太郎)/幽霊と怪光の実話/怨霊と祟り・因果/死の前兆と怪音/各地の怪異実話