家賃六円の血まみれの婆さん
どんな伝承か
高知県高知市の潮江、上役地に良い貸家が空いているというので、父と二人で見に行った。家主は唐人町の料亭鏡水楼で、畳数から見て家賃十四、五円はする家が、わずか六円だという。この家はもと弘岡にあり、金持ちの婆さんが一人で住んでいたが物取りに殺され、無住になっていたのを鏡水楼が買い、今の場所へ建て直したものだった。建てた後に婆さんの幽霊が出るようになり、夜中に二階の梯子段の上の踊場に、血まみれの婆さんが座ってにやにや笑っているという。借り手がつかず空家になっていた。語り手一家は平気で住み、三年目に家賃を上げられて出るまで、何の異常もなかった。
原典より
昭和十九年の冬に、長患いしていた七十四歳になる私の祖父が危篤状態になり、子どもや親戚の人たちが枕元に集まった。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。